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『都市なる伝説 Netlore』

都市伝説(としでんせつ、英: urban legend)とは、近代あるいは現代に広がったとみられる口承の一種である。

                      出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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魍魎ノ類 / COMMENT:0 / TRACKBACK:0
『細胞奴隷』


ついに堪え切れなくなり、俺は胃の中のものを吐き出した。


吐瀉物が地面に打ち付けられ、夜の路地裏にビタビタと不愉快な音が鳴り響く。

それでも尚俺は咳き込み、わずかに残ったカスさえも胃の中から排除しようとしている。
口の中は酸味と苦味とで訳が解らない事になっていた。それがまた嘔吐を誘う。

先ほどまで食していた食べ物がほぼ未消化のままコンクリートの上に撒き散らされている。
ご飯、肉、野菜……そして酒。

“気持ち悪い──”

そう考えた瞬間、そのときの感覚が思い出され、俺はまた吐き出した。
粘り気のある濁った黄色い液体が口から滴る。もはや空となった胃の中からこれ以上まだ何を吐き出そうというのか。
ふいに涙がにじみ、目頭から液体が零れた。

アルコールを摂取すれば感覚が鈍くなるという。
それはそうなのだろう。アルコールは中枢神経を麻痺させ反応や思考を鈍くさせる。アルコールの分解生成物であるアセトアルデヒドは毒物であり、頭痛や不快感を引き起こす結果的に神経を弱らせる。
だからこそ、酩酊してしまえばどうにかなるのではないかという期待をこめての飲酒だったのだが、残念ながら効果はなかったようだ。

どうやら俺は、アルコールの分解が存外に早いタイプらしい。

ALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素/アルデヒドデヒドロゲナーゼ)活性が強いというのはこの場合、僥倖であろうか、不幸な事なのであろうか。
酒に酔えないという事は、人間が持つ逃げ道の一つを奪われているようなものではないのか。
……いや、

あれはあれで美味しいとも思えたのだが──

今更ない道を悔やんでも仕方がない。

薄汚れた壁に手を付き、呼吸を整えた。
先ほどまでに吸っていた空気をすら吐き出す勢いで嘔吐を繰り返したお陰で、多少は楽になった気がする。
口の中に残った酸味を唾液と共に吐き捨てる。つぅ、と口から糸を引き、唾液の固まりは吐瀉物の中に落ちてまぎれ込んだ。

“気持ち悪い──”

手の甲で口の端をぬぐい、不快な汚れを落とす。
息はまだ荒いが生命の危険を感じるほどではない。
俺はなんとか動く脚で場所を少しずらすと、今さっき嘔吐を繰り返したところから少しだけ離れた場所にずるずると座り込んだ。
少しでもいいから休まないと、まともに動ける気がしないのだ。
しかし、どちらにせよいつまでも此処でえづいている訳にはいかないだろう。さっさと家に帰らなければならない。
ここいらの住人には申し訳ないが吐瀉物はそのままにするしかなさそうだ。

大きく息を吸い込むと、冷えた空気が喉を刺すようだった。

冬の夜(クリスマスイヴとか云う奴だ)に俺は一体何をやっているんだろうか。
誰か女が雪が降ればよかったのにねと云っていたのを思い出す。
積雪などこの数年ついぞ見たことがない。
不快感で充ちている今のこの体に寒さは感じられなかった。

“もし雪なんか降っていたら、このまま凍死しかねないな──”

そんなことばかりが思い浮かばれた。
あぁ、くそ。それもいいかなんて思い始めている俺がここにいる。

……この世の半分は、地獄で出来ている。

或いは、もう半分ですら、俺には苦痛でしかないのかも知れない。

そんな事を云ったら笑われるだろうか。
まるで安っぽい終末論者か。或いは悲観主義者か。
どうあれ馬鹿にされるのがオチなのだろう。

だから俺は、誰にもそんな事を言ったことがない。
云ったところで、大抵の奴は理解してくれまい。

だから俺は、『普通』でなければならなかったのだ。

『普通』を演じなければならないのだ。

死ぬまで『普通』である事をアピールしなければならないのだ。

あぁ、しかし、けれど、なればこそ……

“普通でない人間”がいつまでも“普通の人間”を演じられるわけがないのだ。
いつかかならず、ボロが出る。いつか絶対、無理が出る。

例えどれほど自分を騙そうとも、例えどれだけ他人を騙そうとも、あぁ、真実本当のところはつねにそこにあり続けるのだ。
心に嘘はつけないのなら──酒を飲んでも酔えないならば……吐き出すしかない。

ふいに胃が裏返り、空になっているはずの胃から“何か”がせり上がってくる感覚を覚えた。
反射的に背中を丸め口を押さえる。
しかし何も出てくるわけがなく、ただ喉が苦痛に震える音だけが唾液と共に吐き出されるだけだった。

その代わりに、ただ涙だけが溢れてきた。

悲しいわけではない。ただの生理的な反応に過ぎない。

鼻と繋がった涙腺に、上ってきた胃液が反応を促しているに過ぎない。

だがそれすらも、俺からすれば煩わしい事であるのだ。

お腹がすいたら飯を食い、
眠くなったら横になり、
便意を感じたら糞をする。

それらのあらゆる全て、この肉体という肉の塊が持つ、神経細胞が引き起こす化学反応が、欲望という名の生理学的反応が、とてもとてもおぞましいのだ。

俺は人間的な生き方のほぼ総てを否定しているのだろうか?
なればそれはそれで構わない。

“人間的な生など、殆ど全てが糞のようなものだ”

摂食行動などただのエネルギー補給に過ぎない。
それを飾り付ける意味が解らない。
美味しいものを食べたところで何の意味もないではないか。

睡眠など時間の無駄だ。
そんなものを必要とするこの肉体が疎ましい。

……あぁ、解っている。
こんな事を云ったって誰にも相手にされないだろう。
だったら死ねよ、という奴は云うだろう。

だが俺はまだ死にたくはないのだ。
どれほど不愉快に思おうとも、俺はこの肉体と付き合わなければ生きていけないのだ。

“俺”という存在を生み出すこの『脳』を生かす為に、これら不愉快なものと一緒に生きなければならない。

不愉快だと、口に出す事は悪い事か?
不愉快ならば死ねばいいと、消えれば云いと、そんなのは極論だ。

鈍感な奴は幸せだろうと思う。

それとも。

鈍感な方が幸せである事を神経細胞が知っているならば。

奴らはまさに、神経細胞の奴隷でしかない。
それは動物じゃないか、と俺は思う。

神経細胞が望むままに生きるという事は。
本当にそれは人間の生なのだろうか。

でなければ。

こんな風に考える俺の神経細胞のほうが、異常なのか。
細胞が持つ欲望を押さえ込むのは、生物としては間違っているのだろうが。

そんな得体の知れない、由来の知れない欲求などでこの精神を蝕みたくはないなどと。

……ッ

──思考がまとまらない。

頭を振りなんとか立ち上がる。
どれだけ嫌悪しようとも、俺はまだ人間としての欲求にある程度従わなければ生きていけない。
汚れを落とし空腹を充たし睡眠をとりたいと、これでも体は云い続けるのだ。

不愉快なほどに。

不愉快なまでに。

……胃の中が痛い。
歩く足取りもままならなず、フラフラと夜の道を進む。

内臓が握りつぶされるような感覚。
平衡感覚が狂ったような視界の中をのろのろと動いて行く。

す……と。

ふと、こんな夜遅く。
途中で女性とすれ違った。

香水だろうか、特異な刺激臭が鼻を突く。

綺麗な女性だったろう。客観的に見てそれは疑いないと思う。
しかしそれでも。

俺は思わず口を押さえ、吐きこんでいた。

あぁ、全く。

全く。どうして。


どうしてこんなにも“オンナというものは気持ちが悪い”のだろうか。


その乳房も陰唇も。見るに耐え難くグロテスクな器官なれば。

あぁ、その口も、肛門も、何をくわえ込み何を垂れ流すのか。

女が喘ぐ姿を見ただけでも怖気が走る。
男の陰茎を差し込まれた姿など醜悪そのものだ。

まるでエイリアンの交尾ではないか。

小さなエイリアンが地球外の物体Xと絡み合う……吐き気を催すような情景だ。

ゲラゲラと笑うような幻聴が聞こえる。
馬鹿にしたような男と女の顔がチカチカと目に映る。

訳のわからない声をあげ、訳のわからない奇矯に走る男女のマグワイが……。

どん、とガラスに体がぶつかった。
ズルズルと崩れ落ちそうになる体をなんとか支える。

そうだ。

自分は“性”そのものを忌避している。
あれほど気色の悪い部位も、行為も、人間の生のうちにもそうは無いだろう。

本当に。

意味が解らないのだ。

ペニスと、ヴァギナの、ある意味が。

それらを交えるという意味が。

性欲というものが。

訳のわからないAVが。

過激にして奇妙な性行為の数々が。

何故そんなにも人々に必要とされるのか。

それがあるという事が“普通”とされるのが。

あんなにも。

あんなにも、気持ちが悪くて、気持ちが悪くて、しょうがないものだというのに!

──細胞の奴隷は幸せだ。

海綿体の膨張に一喜一憂し、前立腺への刺激で快感を得る。

それは、“ただそれだけ事”にすぎないけれど。

過ぎないはずなのに──

「ぐ……」

胃がせり上がってくる。
内臓そのものすら吐き出せたならどんなにか楽になれるだろうか。

嫌なら見なきゃいいと人は言うだろうか。
陰茎を切り落としてしまえと云われるだろうか。

それができれば、苦労はしない。

普通でなければまともに生きていけないこの世界で。
そんな普通でないことを選択など出来はしない。

そんな決断を出来るほどには、俺は強くないのだから。

だから。

辛くなったら吐く位のことしか、俺には出来ない。

今も昔も。これからも。死ぬまで。永遠に。

「気持ち悪い……」

胃液をぬぐいながら、俺はきりがないほど呟き続けたその言葉を繰り返す。

──気持ち悪い

呪詛のように。

──気持ち悪い

延々と。


──本当に、気持ち悪いんだ。

魍魎ノ類 / COMMENT:0 / TRACKBACK:0
『死ヲ希シ慮ル事念ズ』


死ぬ勇気はない。ただ、朝起きたら死んで居たらいいなと思っただけだ──


   ※


首が捻じ切れたところで、俺はこれが本当の“死”だと思った。

というのは勿論俺の勘違いでしかなく、気が付いたら俺はただベッドの上で喉をかきむしっている最中だった。
朦朧とした意識の中で寝返りを打つ。自分の首が何処にあるのか解らないまま手のひらを見た。
血は、付いていなかった。
ゆっくりと意識が覚醒をはじめ、自分の首が千切れてないことに今更ながら気が付いた。
子供のように背を丸め、目をきつく閉じる。深く深く息を吐き出し、四肢の健全を確かめる。
あぁ、とため息をついた。

俺はまだ、生きている。


   ◆


あれからすぐに顔を洗い朝食をとり、取る物もとりあえず家を後にした。
急ぐでもないが大学に早く行っても損はないだろう。だが、どちらかと云えばあのままあの部屋にいたくなかったというのが本当のところだ。
あそこに住み始めてから、本当に碌な事がない。
いつものように早足で商店街を抜けて行く。自転車は使っていない。
何のことはない。駐輪場の代金をケチっているだけだ。
案の定、商店街を抜けた先の駅前最後の信号機に捕まってしまう。ここだけは押しボタン式でどうしてもタイミングよく抜ける事ができない。
誰も押していないようだったので、仕方なく電信柱に備え付けられた押しボタンを押そうと足を踏み出した。

その瞬間。
爆音と共に自分の体が吹き飛ばされた。

長く長く滞空する。空の中に自分の足が見えた。
体が軽くなったような不思議な感じ。体の中が無重力になったような。
世界が上下左右になんどもぐるぐると回り、やっと最後に地面に叩きつけられた。
自分は何が起こったのかわからずに宙を見上げていた。
周りの人たちが何かを云っている。しかし脳みそから鳴り響く金属音が煩くてよく聞き取れない。
心臓の鼓動にあわせて全てがのたうっている。
大変なことが起きているという実感はない。ただ自分の体が不自由に感じる、ただそれだけだ。
周囲を確認しようと起き上がろうとするが、うまく立ち上がれない。
なにが悪くて立ち上がれないのか良く解らない。
そういえば、人間ってどうやってこの状態から立ち上がるんだっけ?
どうにか立ち上がり方を思い出そうとするが、どうやら忘れてしまったようだ。
しかたなく首だけ動かして周囲を確認する。首の動かし方はまだ忘れては居ないようだ。
視界が動き、空以外のものがやっと目に映った。
それは血だった。
それは実に奇妙に思われた。
血だまりというほどではないが、それは確かに体から流れた血のようにだった。存外、人の体から血は流れ出ないのだな、と無意味に思った。
しかし仰向けというのは本当によく周りを見難い。やってみれば解るが首だけを動かして回りを確認するのは至難のざわだ。
何故こんなにも大変なのか考えてすぐに答えにいきついた。上半身を捻っていないからだ。
どうやら本格的に体の動かし方を忘れてしまったらしい。
やれやれと思いながら反対側に首を回すと──そこにもまた異様なものが見えた。

断面だ。

人の体の断面。よく解らないが、たぶん、お腹の辺りの。
内臓が綺麗に見えるわけではない。それは無理やり引きちぎられた感じのもので、ただ赤と黒が混じった肉の塊だった。
流れ出たと思われる血は少なく、精精コップ2~3杯分ぐらいの量がアスファルトに撒かれている程度だった。
断面の向こう側に足がくっついている。あれはつまり、下半身だ。
では、あの下半身の持ち主である上半身はどこにいったのだろうか。
周りを探してみるが、どうにもそれらしい人物は見受けられなかった。
あの持ち主はどうなっただろうか。即死だろうか。のうのうと生きているとも思われないが。
……ふと気がつき、手を動かしてみる。どうやらまだ動くようだ。
俺はその右手を使い自分の体を触ってみた。
胸……心臓……臍……そこまではある。
しかし、其処から先がどうにも見つからなかった。
腎臓がある辺りの空間にはなんの手触りもなく、ただ右手は宙を撫でるだけだった。
確認しようにも自分の首はその辺りを見ることが出来ない。
ただ、どうやらあの下半身は自分のもので確定のようだ。あの足がつけている服は今朝自分が来た服に間違いがないのだから。
体を上手く動かせなかったのは足がなかったからか……と妙に納得した気分になった。
そうしてそれを理解しすると、だんだんと視界は赤く染まって、痛みが体中にしみこんできた。
それは痛みというよりはもはや形容しがたく。
理解不能な激痛が全身をすり潰していく。
そのあまりの酷さに声にもならない絶叫をあげ、俺は喉を振るわせた。


   ◆


気がつくと駅の改札の前に俺はいた。
きつく握られた右手には定期券が握りこまれ、全身から汗が噴出していた。
上手く声を出す事が出来そうにもなく、自分はそこで数分間ただ突っ立っていた。
気にするな。
気にするな。

いつもの事だ。

そうしてようやっと呼吸が整うと、自分はそのまま改札を抜け、駅のホームに踏み出した。
どこでも寝てしまう病気というものが在った気がする。
では、どこでも悪夢を見てしまう病気というものはあるのだろうか。
それともあれは妄想なのだろうか。白昼夢ではなく、酷くリアルな。
自分は狂っているのだろうか。
……いや、それはない。
俺には別に精神を病む理由などない。精神衛生は極めて良好。肉体的にも恵まれている方だと思う。
妄想や幻覚、幻聴の類を見た覚えもない。
それにしても酷い話だ。ここに越してきてから悪夢ばかり見るようになってしまった。
とりあえず未だ日常生活に支障はないので放置してあるが、流石に身が持たないかも知れない。
駅のホームにアナウンスが鳴り響く。
そしてそこで俺は一つのどうでもいい事に気が付いた。
ここは駅のホーム。そして俺は列の最前線。後ろには多くの人。今まさにホームに滑り込んでくる電車。

あぁ、来るな──そう思った刹那。

自分の背中が突き飛ばされるのを感じた。

嗚呼、全く。酷い悪夢だ。
それともこれだけは現実なのだろうか。
眼が覚めたら普通に電車に乗り込んでいる自分が居るのだろうか。
それとも。
今まさにバラバラに切断されたこの自分こそが、本物なのだろうか。

とりあえずどうでもいい事が一つだけある。
それは。
自分はまだ、死ぬ勇気はないという事だ。

どんなに悪夢が続いたとしても。
自分はまだ死にたくはないのだ。

だから、──いつか本当にそのまま死んで欲しいと思っている。


切実に、そう思っている。




魍魎ノ類 / COMMENT:0 / TRACKBACK:0
『オール オア ナッシング』

「ふっっっっっっっっっざっけんなッ!!」

思わず投げつけたコントローラーが宙を舞う。
寸瞬の間を置いて入力デバイスは大きな音を立てて床に転がり落ちた。

「ノーダメとかマジありえねぇし! 人間じゃねぇーー!」

一通り思いつくような悪態が頭の中を駆け巡り、俺は肩で息をした。

「なんつー……」

しかしすぐにはと思い直して、コントローラーを拾いなおす。
ディスプレイ上に浮かんだ対戦ゲームの画面を覗き込むと、相手のキャラクターが今まさに勝ち口上を言っている最中で止まっていた。

「なんだよこいつ──完全にレイパーじゃん……」

相手のキャラは決して性能的には強い方ではない……というかむしろ弱キャラとされる部類の奴だ。
片や自分の方は多少優遇されているといってもいいような──要するに強キャラなのだが……いや、上手い奴が使えばどんなキャラだって強いは強いのだ。

問題はキャラ性能ではなく、相手の桁違いの強さだった。

俺はそれでもそこそこ腕には自信があり、まぁ人間辞めた連中よりは弱いのだが、そこそこ上級者相手にも戦える自負はあったのだ。
立ち回りもそこそこ。相手に合わせて戦略を変えることも出来る。勿論、コンボ精度はほぼ100%。ミスも少ない方だと思う。

だが、今先ほど戦った相手はそんな次元を軽く超えていた。

「結局ダメージ与えられたの初戦の1Rだけかよ──」

これはもう本当に人間を辞めているとしか思えない。
読みの深さが尋常じゃない……というか、完全に相手の動きを読んでいるとしか思えない。

こちらの動きを見た瞬間に、それに応じた行動を瞬時に行っている──感じ。

言葉で言うのは簡単だが、これほど実現が難しい事もない。
当然、硬直が長い技などとなれば反応できる人はそれなりに居るのだが、そうでないなら話は別だ。
1F(フレーム)つまり、1/60秒の差で攻撃の可否が決まるゲームでノーダメージを実現するのは相当な技術と経験が必要である。

ましてやそれを2戦の2R共に続けて達成するなど人間の技ではない。

「最後は完全に虐殺だったな……」

最終試合はもはやこちらが攻撃を振る余裕すらなく、ただひたすらに相手の攻撃をかわししのぎそれでも最後には殴られるしか道は残されていなかった。

「つーかどんだけこっちの動き予想できてんだよ! 暴れとか反撃が全部潰されるとかありえねーから!」

格闘ゲームはその進化の性質上、ハメ技は存在せず、常にこちらが不利な、つまり相手が有利になる場合が多々あるように設計されている。
そうする事で一進一退の攻防や、攻撃を回避しての反撃などが行えるようになっているのだ。

しかし今回の相手はそれらを全て拒否してきた。
正確に言えば、こちらが優位Fを見逃さずに回避や反撃に転じようとしたところを、それを見透かしたようにこちらの動きに合わせて直前行動を変えてくるのだ。

「もはや上級者ってレベルじゃネーだろ……どうしてこんなところに居るんだよ。──まぁレイパーに違いないんだけどさ」

下級者相手にここまで出来ればさぞ気持ちがいいもんだろうよと思う。
なんせパーフェクトゲームである。

そして俺は本気でムカついていた。
なんせパーフェクトゲームなのだ。

この行き場のない怒りをどうしてくれよう。
名前を晒してやろうかと思いつつ相手のプレイヤー名を見たところ、

「HAL……9000?」

変な名前だなと思いつつスタートボタンを押したが、唐突に相手との回線が切られた。

そういや3戦だけって話だったか。

煮え切らない何かを感じたまま掲示板を立ち上げ、相手の名前を晒そうとしてふと手を止めた。

「なんか……かっこ悪いな」

曲がりなりにもそこそこ上級者である俺がボコボコにレイプされましたなんていうのは、如何にもダサいではないか。
しかも俺の名前はスレ内でもそこそこ知られている。
下手な事を云ってしまえば、ちょっとボコられたぐらいでレイプされたとか云う、自称上級者(笑)なんて云われかねないのではないか?

そう思うと相手のネームを晒すのもなんか馬鹿馬鹿しくなってきてしまった。

納得いかないのは確かだが初心者や中級者でなしに、強い奴にぶち当たってぶち殺されるのも仕方のないことではないのか。
腕っ節が強い事を自負するならレイプまがいのことをされても仕方がないという事なのだろう。

という訳で俺はそのまま掲示板に、対戦ありがとう御座いました、と書き込んで回線をいったん遮断した。

「よいしょっと……」

そしてそのまま返す刀で初心者スレに移動し、対戦募集の書き込みをする。

ユーザーネームを書き換えるとすぐに対戦相手が見つかり、そのままキャラセレクト画面に移動した。

上級者を名乗る以上、レイプされた事はショウガナイ。水に流そう。
だが、この怒りは解消しなければならない。
ゲームで受けた怒りはその場のゲームで発散するべきだ。

つまり、今度は俺がレイプする番だ。

これがゲームであり対戦である以上、ある程度の礼儀は必要である。
意味もなくゲーム初心者をボコボコにするなんてのは決して褒められるような行為じゃないだろう。

だがそんな事は知った事じゃない。

対戦ゲームは基本的に

“勝たなきゃ面白くない”んだからな。

相手とギリギリの勝負をするから楽しいというのは本当だが。

相手を圧倒して勝つという快楽も、間違いなくここにはあるのだ。

魍魎ノ類 / COMMENT:0 / TRACKBACK:0
『引き篭もりの愚者』

   愚か者は誰だ?

        ──誰もが愚かだ。


魍魎ノ類 / COMMENT:0 / TRACKBACK:0
『危機感欠如認知バイアス Somebody else's problem acknowledgment bias』

「何か食べるかい?」

ソファにもたれかかりながら本を読んでいるとそんな声が後ろから飛んできた。
私は本から目を離して首をそのまま後ろに倒した。

「何か作ってくれるんですか?」
「折角だからね。一人分作るよりも二人分の方が楽だし」

そう云って先輩は冷蔵庫のドアを開けた。中身を見た彼はうーんと唸っている。

「食材あんまりないなぁ──あ、ひき肉が冷凍してあるじゃん。じゃあこれでなんか作るか」

そうして暫くするとレンジが稼動する音が聞こえだした。

「何作ってくれるんですかー?」
「んーー? 玉ねぎとかあるしハンバーグでもと思ってるんだけどね」
「いいですねぇハンバーグ。ジューシーな肉汁がこうじゅわっと……」
「──こう云うのはなんだが男の手料理にあんまり期待はするなよ」
「しませんよ」
「そりゃあよかった。変に高望みされても困るからね」

そう云うと調理場のほうからバリバリと玉ねぎをむく音が聞こえてきた。

「そう云えば実験の方は大丈夫なのかい?」
「私の方はまだあと数時間はただインキュベータで培養させるだけですよ。そういうそっちはどうなんですか?」
「俺はただ結果を纏めてるだけでね。エクセル三昧さ」

玉ねぎをみじん切りにする音が響く。存外に手際は良いようだ。
レンジが音を立て、ひき肉の解凍を注げる。

「暇ならちょっと手伝ってくれないかい? ひき肉をそのボウルにあけてくれ」
「…………ま、別にそのぐらいなら良いんですけどね」

私は立ち上がって彼の居る調理場に向かう。あくびをかみ殺しながらレンジをあけ中のラップに包まれたひき肉を取り出す。
ボーっとした頭でそれをボウルに放り込むと、ふとそこで変な違和感を感じた。
ボウルの中に放り込んだ肉をよーく観察してみる。

「あの……すみません」
「ん、なんだい?」
「この肉──」

自分の目に映っているものが正しければ……

「腐ってません?」

普通なら発色は悪くても肉は肉。基本的には赤いもののはずだ。
だが目の前のひき肉はどう見ても……茶色を通り越して灰色が混じっている。

心なしか変な匂いもする。

えーっとつまりこれは──

「……これでハンバーグを作ろうというんですか?」
「──その通りだが?」

そう云って怪訝な顔をする先輩。

「こッ……」

私はそのまま両腕を大きく振り上げた。

「こんなもん人に食わすなぁあああああ!!!」

人間は本当に切れたらちゃぶ台をひっくり返せるらしい。親父の気持ちが解った気がする。

「半分腐った肉で作ったものを人に食わせようとするとかどんだけ無神経なんですかあなたは!」
「大丈夫だ、このぐらいじゃ何も起こらないよ」
「よくねーー!! こんなん普通の飲食店でやったら賠償問題の後盛大につぶれますよ!」
「別に俺は金を取って喰わせようとしてるんじゃない。故にモーマンタイだ」
「ただでも食わせるな!!」
「喰えるだけでも神様に感謝しないとな」
「この飽食の時代になにをほざきますか!」
「世の中には喰いたくても食えない人間が……」
「うわーうぜー好き嫌いの多い子供を説教する方便がこんなにもうざく聞こえるー!」
「わがままの多い奴だ」
「腐ったもんはNo Thank youだよ誰でも!」

私がひとしきり絶叫したのを見届けると彼は油をいれ熱したフライパンにみじん切りの玉ねぎを放り込んだ。

「そうか喰わないのか──じゃあ自分で食うものは自分で用意してくれ」
「そうさせて頂きます先輩」

そう云って私は台所の片隅をあさってカップラーメンを見つけ出した。
腐った肉で作られたハンバーグよりは100倍ましである。いや、1000倍。

先輩は軽く炒めた玉ねぎを皿に取り出し余熱を取り始めた。その間にひき肉をスプーンでグリグリとかき混ぜ始める。

「っていうか本当に食べるんですか? その肉」
「そのつもりだけど」

私はポットに水を入れながら大きくため息をついた。

「どうみてもその腐り掛けのひき肉はやばいですよ──だって変色して異臭まで放ってるじゃないですか。ダブル役満ですよ。死んじゃいますよ」
「んーーー……大丈夫じゃね? この程度じゃ死なないって。悪くて腹壊すぐらいだ」
「あぁ、腹壊すかもとは思ってるんだ」
「鋼鉄の胃袋は持ってないからなぁ残念ながら」

そうぼやきながら彼はひき肉に手早く調味料を混ぜていった。塩コショウに醤油、軽くサラダ油。
それでも美味しそうに見えないあたり、本気で腐ってやがる。

「っていうか食中毒は不味いですって、マジデ。今の時期ピークは過ぎたといってもまだO-157とかは怖いですしね」
「大丈夫。流石に今回はミディアムレアにはしないさ。中まできちんと火は通すよ」
「いやそれでもですね……」

私の言葉を半分に聴きながら彼は熱の取れた玉ねぎを入れた後、卵、そしてパン粉をひき肉に混ぜて行く。

「どうみても半分腐りかけですよね? こうなってくると怖いのは食中毒菌だけじゃなくて、腐敗菌が吐き出した毒素でもあってですね」
「まぁ確かにそれはあるな」
「解ってるならどうしてそんな余裕なんですか……」
「火を通せばなんでも喰える」
「あなたは消し炭でも食べる気なんですか?」
「何を云う。そんな発がん性物質、腐った食べ物より危険じゃないか」
「腐った食べ物も十二分に危険だよ馬鹿!!」

私の叫びも虚しく彼はひき肉をドンドンと成型していく。
小麦粉を表面につける作業も怠らない。

腐敗と食中毒は厳密には異なるのだが、兎に角見た目に危険信号が出ているのにそれでも喰おうとしているコイツの気が知れない。(※1)

「あなた見てるとなんだかうちの親父思い出しますよ……腐りかけが美味いんだとかほざいて明らかにやばそうなのポンポン食べるんです。止める人間の気にもなってくださいよ」
「腐りかけが美味いのは本当だろう?」
「そんなのは俗説ですよ。正確に言えば認識がずれてます」
「細菌が肉のたんぱく質などを分解する事で旨み成分であるアミノ酸を生み出したり肉を柔らかくしたりってのが?」
「ついでに酸味成分でもある乳酸や腐敗アミンなども生み出し、その過程で腐敗臭である硫化水素やアンモニアも発生しますよ。第一どんな菌がその中で増殖してるのかも知れないのに、よくそんな腐りかけのものなんか食べられますよね」
「冷凍していた肉だからタブン恐らく、この中で増殖しているのは世間一般で言われるような食中毒菌じゃないと思うよ。極低温、氷の中でも活動できる細菌は限られているからね」
「極低温でも微増殖できる食中毒菌は居ますよ……だからなんなんですか全く」

それでも彼は手を止めることなく新しく用意したフライパンを火に掛け始める。

「あれですか? 自分だけは大丈夫とかそういう理屈ですか?」
「うん? ──うーん、自分だけは大丈夫…………なるほど、ね」
「?」

彼はなにやら思案げな顔をした後、むっすりと黙り込んでしまった。
それでもその手は止まらずにどんどんと腐り肉団子を手早く焼き始めてしまう。
本当に食べる気なのだろうか──だんだん本当に心配になってきた。

そうこうしている間にポットのお湯が沸いたようだ。
私は不安になりながらも自分のカップラーメンの用意をし、ソファの前に戻る。

あの危機意識の欠如というのはなかなか度し難い気がする。
自分だけは大丈夫、という認識は結局のところ、それがなんの意味もない錯覚であることを如実に語る。

誰一人特別な人間はおらず、ただ突然のアクシデントで、人は死んで行くのだ。

まさかこの自分が、という意識を抱きながら。現実とは常にそういうものである。
それを本当に理解しているのだろうか……?

そんな事を悶々と考えているといつの間にか先輩が大量のハンバーグを皿に乗せて目の前にやってきた。

「なんだ、まだ喰ってなかったのか。麺が延び延びになるだろう」
「あ……やっちゃった」

つい考え事すると没頭する癖が出てしまった。蓋を開けるのが怖いぐらい時間が経ってしまった気がする。

「あれかい? カップラーメンは20分ぐらい放置して食べるのが好きなのかい?」
「そんな人間が居たら見てみたいですね」

私は諦めてカップラーメンの蓋を開ける。案の定、殆ど汁が残っていない。
腐った肉よりはましだがこれも大分わびしい感じがするのは何故だろう……

「それはそうとハンバーグはどうなんですか?」
「ん……? んー……普通」

そう云って彼はハンバーグを黙々と口に運ぶ。

「普通って……大丈夫っぽいですか?」
「ワカランが──可もなく不可も無くだな」
「って云うかハンバーグだけ食べるんですか?」
「ご飯を食べていたら全部食べられないだろう流石にこの量は……」
「ラップでもして冷蔵しておけば良いじゃないですか」
「そんな事してこんなもん他の人が間違って喰ったら一大事だろ常識的に考えて」
「あぁそれはそうですね……って! それをあなたは私に食べさせようとしたんじゃないですか!」

すると彼は一つため息をついてこう答えた。

「俺の目の前で食うのは構わないが、俺が目を離した隙にこれを食われるのは流石に寝覚めが悪いからな。知らないで食ったやつにも申し訳ないし」
「理屈になってねー!」

またもやちゃぶ台をひっくり返しそうになる私。
おちつけーおつくんだー

「本当に大丈夫ですか? 腹痛になったら云って下さいね。救急車ぐらいは呼んであげるんで」
「それはありがたいね」

そう云って彼はハンバーグを口の中に放り込んだ。

「それはそうとさっきの話だが」
「? 何の話ですか?」
「だから『自分だけは大丈夫』的な認識の話さ。おれ自身ね、実際そんな感じはするのさ。こんな腐った肉で作ったハンバーグを食ってる最中ですら、特に問題は無いだろうという感覚でね。なんとも不思議なものだ。云われてみるとこれはかなり、“異常”だな」

あぁ、一応異常だとは思うんですね……なんか変な感じですが。

「腐敗に対する危険性や食中毒菌のやばさはおれ自身、十分に認識はしているのさ。それでもどうしてだろう、全く怖くないんだ。この危機感の無さ、危機意識の欠如は、なんとも云えず心持の悪いものだな。違和感だ。全く危険性を認識していない自分の心が“気持ち悪い”」
「はぁ……それはどいしてなんででしょうね?」
「さて、どうしてだろうと思う? お前はどう思う?」
「え、私ですか?……」

いきなり回答を要求されて窮する私。

「といっても、あなたの心理状態なんか知りませんよ──解るわけ無いでしょう?」
「何を言ってるんだ。こんなのは俺に特異な心理現象じゃないだろう。人間誰しもが持つ感覚だよ。人は常にね、正常な危機意識というものを持たないものだ。解るか? 誰でも大抵の場合、“自分だけは特別だ”なんて、そんな妄想の中で生きているものさ」
「そんなもんですか?」
「そんなものさ。正常で客観的な現状把握を定量的に認識できている人間などいやしないね。それはまさに、現実的な人間像じゃない。人はいつでも、思い込みの中で生きている」
「はぁ……で、じゃあだからなんなんですか?」
「この危機意識の無さを、説明しろっていってるだけさ」

話が回りくどい。

「なるほどね……えーっと、じゃあ──つまり、あれですよ。平和ボケ」
「俺は今この日本の状況は非常にヤバイと思ってるんだけどな。平和ボケとはとてもじゃないが云えない精神状態だ。誰がこんな日本にした!」
「あぁそうなんですか……じゃあそうですね──意識が乖離してるんじゃないですか?」
「俺は精神病を患ってねー」
「他人事なのかも?」
「他人がこのハンバーグを食べても別に心配しネーけどな」
「いや流石に心配してあげて」
「他にはなんかないのか?」

私はそこで少し真面目に考えてみる。

「う……じゃあそうですね……そんな風に危機を感じたら常に回避している、なんて生き方をしていたら人間はまともに生きていけないからじゃないですか? 食い物の安全性が常に確保されているわけでは在りませんし、どこかでそうやって危機感を感じないようにしないと“生物的に生きていけない”んですよ。だから、危機感をなくしているんです──その脳が」
「ほう、なるほど。良い線いってるな。……だが、それも少し違う。そんな回りくどい話じゃあないんだよ。ワカランか?」

そうこう云いつつも食の手を緩めない彼。ただ単に神経が図太いだけなんじゃないだろうか。

「えーっと、じゃああれですねきっと……経験則的に大丈夫だって解ってるんですよ、たぶん」
「ほう──経験則で安全だと認識しているからこうやって喰えるのかと。ナルホドね……だが少し違うな。俺はそれほど腐った肉を調理するという経験はした事がないよ。故に、“経験則的に安全である事を知っている”訳ではないんだ。そもそも、そんな経験は当てにならないだろうよ」
「う……じゃあなんなんですか?」
「ふん──そこまで云えば正解もすぐ其処なのにな。──つまりさ」

彼はそう云ってハンバーグを突き刺したフォークをこちらに向けた。

「“逆”なんだよ、“逆”」
「…………ぎゃく?」
「そう、逆。真逆」

そう云ってフォークを口に運び、ハンバーグを食べる彼。

「経験則で安全である事を知っているんじゃない。“危険である事を経験則的に知らないから”だよ。それなら総ての理屈が説明できる」
「はぁ──そう違わないと思うんですが」
「そうか? これは大きな違いだよ。そもそも安全である事を経験則で知っているからといって、それが絶対安全であるという保障にはならないんだよ。そんな経験則は思い込みだ。だが、危険である事を経験則で知らないというのは違う。本当に危険であることを知らないから、人は危険な事でも出来るんだ。こんな風に、“腐った肉を食べる事もできる”」
「うぐ……」

あの半分腐ったひき肉の映像が頭をよぎる。

「なるほど、それなら総ての説明がつく。危機意識が低いのは、経験が無いからだ。危機感の欠如は、危険である事を本当に認識しては居ないからさ。おれ自身、実際に食中毒にはなった事がなくてね。そんなことが本当に起こる等と、全く考えてもいはしないのだろうよ。……その危険性を具体的に知っては居てもね」

そう云ってまた一口、肉を食らう。

「生物はそもそも、“危機感”などという認識的神経機構は持ってないよ。彼らは常に本能と経験則によってのみ動く。事前に起こりうる危機というものを想定する事はない。彼らが物事を忌避する場合、それは危機感による行動ではなく、ただ本能的にそれが危険であることを知っているからに他ならない」
「でもじゃあ人間はどうして危機感という概念を作り出したんですか?」
「それは人間が意識を持っているからさ。或いは“恐怖”か。この複雑で高度な社会の中にあって、危険は山ほどある。さて、致命的な失敗を犯す前に人間は危機感を持たなければ生きていけない。……だがね、危機感というものを完全にコントロールするのは至難の業なんだよ」
「はぁ──それは何故?」
「簡単な事だ。人間はヒューリスティクスな思考によって判断するものだからさ。簡略化した思考の中で簡略化した危険性を感じ取るに過ぎない。要するにさ。大抵の判断は極端に振り切れるものなんだよ。安全であるか、危険であるか、その両極端にしかならないんだ。リスクマネージメントってのは、ある意味で人間の心理を本当に理解してなけりゃ出来ない芸当だよな」

彼はそして半分ぐらい肉を残したまま、フォークとナイフを皿に置いた。
なにをするのかと思うと彼は台所に行って、すぐに戻ってきた。麦茶の入った容器とコップを持って。

「ときに、リスク認知って知ってるか?」
「リスク認知って……あの能動的か受動的かとかの? 飛行機事故を怖がるのは馬鹿馬鹿しいとかいう」
「ま、その通りさ。リスク認知ってのは要するに、『不確実な事象に対する主観的確率や損失の大きさの推定,不安や恐怖,楽観,便益,受け入れ可能性などの統合された認識の事である。それは,人に共通する情報処理能力の限界と,知識や価値観,性格などの個人差に依拠している』という訳だ。
人間はリスクを過大、あるいは過小評価をするものだ。殺人を不必要に怖がるのは過大評価。癌になるとは思いもしないのは過小評価。リスク認知と現実にはかのように乖離現象が存在する」

彼は麦茶を一気飲みするとカハーっと息を吐き出した。
やはりこいつは神経が図太いうんだと思う。

「細かく説明するのは省くが、兎に角人間の心理ってのは一筋縄じゃいかなくてね。情報量や知識、主観的確率推定、リスクコントロール、利用可能性ヒューリスティック、どれくらい有名か代表的なものに囚われもするし、直感だけに頼ったりする。確率の過大評価や過小評価も起きる。ほら、こんなにも人間の思考ってのは複雑で“単純”だ。リスクを正しく認識するってのは、もはや不可能だな」
「そんなに……不可能ですか?」
「原理的に無理だな。馬鹿なんだよ。人間ってのはね。実に、複雑な心理過程を経るくせに、嗚呼なんてことだろう、こいつらはみんな馬鹿ばかりさ。知っていようが知っていまいが関係ない。人間はどうしようもなく事実実際の危険性を知ることは出来ない。こんな人間が持つ“危機感”など、何の意味があるというのさ。そんなのはどちらにせよ妄想さ」

彼はそしてまたハンバーグを黙々と食べ始める。

「……いずれにせよリスク認知というものは簡単に説明できる。いや、簡単な理屈に還元できる、だな。それはね、“インパクト”だよ」
「インパクト……ですか──?」
「それを良く知っているならばそのインパクトは少ない。自動車事故に対するリスク認知がこれ。
それがより衝撃的な結果を生み出すならそのインパクトは高い。殺人や飛行機事故の過大評価。
未知のものはインパクトが大きいが、なじみのものはインパクトが少ない。新型インフルエンザが良い例。
自分から自分の為に行う行為はインパクトが少ない。喫煙や登山など。
テレビで頻繁に流され恐怖を煽る場合はインパクトが強いが、普段から情報を垂れ流しにされる事でインパクトは低減して行く場合もある。新規の病気や既存の病気。
高い確率はインパクトが大きいが、それが既知のものならインパクトは減少する。心臓病など。
低確率でも不安や恐怖が大きいものはインパクトが特に強い。殺人などの犯罪、未成年者略取や医療事故。etc....
リスク認知は過大評価と過小評価のオンパレードだ。人間はかのように、極端に判断するものだ」
「はぁ……」

なるほど確かに。
そう云われてみれば云っている事は良く解る。リスク認知とは云うほど、現実に即した認識ではないという事だ。

「認識はバイアスだらけで理解はヒューリスティクスだらけだ。こんな人間がほら、腐った肉を食うことに対する危険性を正しく認識できないのは実に普通の事だ。俺はこのことに対し、インパクトをなんら感じない。故にリスクは低いと判断する」
「実に危険な思考ですね」
「無駄極まりないな。正しくリスク判断できない人間はそのまま死んでしまえば良いのだ」
「あなたもですか?」
「はん……」

彼は馬鹿にしたように息を吐き出し、

「この程度のリスク認知は過小評価でも何の問題も無いさ。だがね、人々の生活に関わる大事なところで無駄に過大評価することや過小評価するのは、──それはとても見過ごせない欺瞞だよ」

そう云って彼は麦茶をあおり、コップを机にたたきつけた。

「忌々しい。大した危険性も無いのに恐怖を煽るマスコミも、今すぐ其処にまで迫った危機を見過ごす連中も、どいつもこいつも糞食らえだ。リスク認知もまともに出来ない奴ら、実に不愉快だな。混乱をもたらすのはいつだって無知なる者共だ。社会を巻き込んで、実に下らないな。一遍死んでくれ」

……どうやら日本の社会を憂いているというのは本当らしい──が。

「とりあえず落ち着いてくださいよ──私に当たられても困りますってば」
「あぁ全く……何が知的生物だ。こんな単純な認識も出来ないくせにえばり散らすなというのだ。リスクの過大評価も、過小評価も、実に無駄だ。殺人が、通り魔殺人が起きたからなんだというのさ。そんなのは確率の問題に過ぎない。騒ぐ理由が全く“わからない”」
「いや通り魔殺人は問題でしょうよ……」
「その事件自体は問題だがね。だがそれとこれは全く関係が無い。歩行者天国を廃止して、はてだからなんだというのだろう? 馬鹿じゃないか? そんな大騒ぎは全くの無意味だよ」

腐った肉に分解されたアルコールでも含まれていたんじゃないだろうか──本気でそんな気がしてきた。

「新型だかなんだか知らないが──……」

──

彼はふとそこで黙りこくってしまった。

「…………が? なんです?」
「腹が────痛い…………気がする」

ちょっとトイレに行ってくる──そう云ってふらふらと部屋の外に出て行った。
呆然としながらその後姿を眺める自分。

「…………ちょ、マジッスカ──」

そして喰いかけのハンバーグに視線を戻す。
確かに。彼のいう事はもっともだ。

リスク認知を正しく行える人間というモノはそうそういないのかも知れない。

問題は、結局人間というモノはリスクなどを全て簡略的に認識する以外に思考する方法がないという事なのだ。
受け取り方は所詮、主観であり、大抵の場合、さまざまなものによってバイアスが掛かる。

危険性の認識は経験則で決まり、感覚的なインパクトで決定する。

人間が大抵の場合、危機感なく行動するのは何も考えていないか、何も知らないか、あるいは何も感じていないかだ。

人間が過剰に危機感を感じる場合、それは過剰に評価しているか、無駄に関心があるからか、或いは恐怖が勝っているからだ。

あなたが死ぬ危険性を、あなたは定量することが出来ない。

それは数値化不可能で、故に感覚に頼るしかなく、その所為で過小評価か、或いは過大評価してしまう。

あなたのその感覚は正しい判断をもたらしているか?

それを考えた事はあるか?

無ければ、考えた方が良いだろう。


あなたのその感覚は、──“嘘をついているぞ”




※1:食中毒と腐敗の分類。http://www.h7.dion.ne.jp/~ramu4/hanasi/syoku/jo.html

※2:腐った肉を食う場合は気をつけましょう。というかやめましょう。著者は特に問題ありませんでしたが。

※3:あなたは自分の感覚が嘘をついているという事を理解できるか否か? 理解できる、或いは出来ないというならば、それが何故なのか説明できるか? それが今回の命題である。

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『傾ぐ世界 Poltergeist』

いつものように中庭を通りながらサークル部屋に入ると、見知らぬ顔の男が1人、部長と机の上のチェス盤をはさみ顔をつき合わせていた。

「おはようございます……ってあれ、部長、その人は?」

二人が顔をあげ、こちらを見る。

「おはよう。今日は遅かったな」
「ちょっと今日の授業の復習をしていたもので──そちらの方は?」

知らない男は手を上げて軽く会釈をした。こちらも軽く頭を下げる。

「はじめまして。こっちはそうだなぁ、コイツの古い友人さ」

そう云って男は部長の方を指差した。

「中学が同じだっただけさ」
「つれないなぁ。こうして折角遊びに来てやったというのに」
「お前の暇つぶしに付き合わされて喜ぶ趣味はないよ」

どうやらそういう間柄らしい。私は荷物を置いて二人が挟んでいるチェス盤の横に座り込んだ。

「あれ、部長チェスなんか嗜むんですか?」
「いいや、こまの動かし方も知らないよ。ただこいつが少しは知ってるらしいからさ。教えてもらってるところだ」
「俺もまぁ、駒の動かし方と簡単な戦略ぐらいしか覚えてないけどな」

そう云って男はポーンの駒の特徴を説明し始めた。

「こいつは将棋の歩に当たる駒だが、動き自体はたぶん、一番複雑だ……ポーンは最初だけ──」

男はポーンの基本的な動きを部長に伝授して行く。

「なるほどね。という事は戦略自体も大分将棋とは違うんだな」
「あぁ、イメージとしては初めから詰め将棋してるような感じだ。やってみりゃわかる」
「ルールはそれでオワリか?」
「あぁ、じゃあそろそろ実践と行くか」

男はそのままチェスの駒を初期配置に置いて行く。

「黒が先手だ。お前からどうぞ」
「ふん…………」

軽く鼻を鳴らすと、部長はまず手始めにクイーンの前のボーンをニマス前方に動かした。

「……なんですか、それ」
「そういうものなんだよ」
「チェスのルールはかなり変則的だからね。将棋の駒使い廻しできないルール程度に考えてると痛い目を見るよ」

そう教えてくれた後、男は同様にクイーン前のボーンを同じようにニマス動かし、先ほどのボーンと真正面から向かい合わせる形にした。
……だいぶよく解らないゲームのようだ。チェスのルールぐらいは知っていた方が大人らしいだろうか。
日本人は知らない方が大半だろうと思うけれど。

「そははそうと」と、ふと気がついたように男は顔を挙げ、こちらを向いた。「君はこのサークルの部員?」
「え、えぇ。そうですよ。一年でまだ入ったばっかりですけどね」
「君も大分変わってるね。こんな何やってるかも解らないようなサークルに入るなんて」
「自分でもなんで入ったのか良く解らないんですよ」

そう云って今年の四月を思い返す。
他にも沢山あるサークルの中で、何故かこのサークルを選んでしまった自分。人員が多いわけでもなければ明確な目的があるわけでもない。……おまけに楽しそうでもない。
ただ時々旅行が出来る、みたいな話に惹かれたのだろうか。特に“タダで”という部分に。

「その癖、まだ一度も活動らしい活動はしてないんですよね」
「……毎週活動するようになったら死んでしまうな」

そう云って部長はナイトの駒を動かした。男もすかさずビショップを動かす。
チェス盤は意外と狭く、こうしてみると一瞬にして泥仕合になりそうだが、ルールを知らない私にはそれすらも良く解らない。

「ソレはそうと聞いてくれ。ウチの家にはポルターガイストがでるんだが」

男は唐突にそんな話を振ってきた。

「は? ポルターガイストって……本気ですか?」
「本気も本当さ。毎日色々と被害にあって困ってるのさ。あぁ誰か何とかしてくれないかナァ」

そう云って笑いながら男はルークを動かした。部長はそこではたと悩んでしまう。

「ポルターガイストって……具体的にはどんな被害にあってるんですか?」
「そうだなぁ……」顔を上に向け目を瞑り、思い出すように考え込む男。

「例えば扉が勝手に開いたり、逆にしまったり──モノがいきなり物凄い勢いで転がりだしたり。そんな感じかナァ。あ、あと時々物凄い音がする。バキッって感じの」
「────それ本当ですか?」
「嘘言ってどうするのさ。全部本当の事だよ」

そんな話をしながらも男は楽しそうにニヤニヤと笑っている。

「本当なら大変な話ですけど……笑い事じゃないと思いますが」
「ところが実は……本当なんだな。これが」

部長が軽く合いの手をいれ、ボーンをルークの射線上に動かした。

「あれ、部長知ってるんですか?」
「知ってるも何もこの目で見てきたからな。こいつの言ってることは全部本当のことだよ」

そういいながら部長は男を白い目で見た。

「お前、誰にでもその話振るのか?」
「そうか? 悪くない話題だと思うけどな。あくまで冗談なんだし別にいいとおもうけど」
「あぁやっぱり冗談なんですか」
「いや、ジョークだけど本当の話だよ」

だからどっちなんですか……

「霊障にあってるのは本当のことだけどあまり気にはしてないって事ですか?」
「ま、確かにもう気にはしてないね──」

男はそう云って肩をすくめた。なんだか本当に良くわからない話だ。

「うーん、友達に霊感がある女の子がいるんですけど……連れて行って見ますか?」
「マ ジ デ 。そりゃあいいね。是非お願いするよ」

小躍りしそうな勢いで喜ぶ男に、部長はおいと声をかけた。

「お前のジョークに他人を巻き込むな。あとさっさと駒を動かせ。──そしておい、その霊感のある女って誰だ。今度つれて来い」
「…………」

えーーー。なんか面倒な話になってしまった。どうしてこうなった。

「いいですけど……なんで私がそんな事しなきゃいけないんですか」
「サークル活動をより磐石なものにするためだ」

謎のサークル活動をオカルティックな方向に強化するのはどうかと思うけれど。

「で、結局なんなんですか、そのポルターガイスト。どうして欲しいんですか」
「どうする必要も無い。こいつの家の怪奇現象は別になんの変哲もない物理現象に過ぎないんだからな」
「扉が勝手に開いたりすることがですか?」
「その通りだよ」

部長は大して面白くもなさそうな顔をして男に顔を振った。

「いい加減に説明してやれ」
「やだよ。あれは本当にポルターガイストなんだぜ。俺がそう決めたんだ」
「……どういう事ですか」

本当によく解らないのだけれど。
彼らは何をいっているんだろうか。

「つまりさぁ」部長は仕方なさそうに片肘を突くと、


『こいつの家はひどく傾いてるんだよ』


そう云った。

「ポルターガイストの原因は全てそれ。扉が勝手に開くのは傾いてるんだから重力にしたがって動いてるだけさ。勝手に閉まるのも同じ事。モノが勝手に凄い勢いで転がるのは床が斜めになってるから。丸いものなら加速度の影響でかなりいきおいよく転がって行くよ。別に不思議でもなんでもない」

じゃあ、と私は口を開いていた。

「ラップ音の原因は……」
「家が傾いてるんだ。構造的に負荷が掛かってくる部分が勿論ある。音の原因は家が軋みを挙げているだけだよ。──そのうち本当にあの家は倒壊するだろうな」
「おいこら、そのうち俺の家が倒壊するかのような言い方はやめろ」
「事実を言ってるだけだ」

そう云って部長はビショップを動かした。「チェックメイト」

「……いつの間にか負けてるし」
「真面目に指さないからだよ」
「自分から誘っといてなんだけどチェスって意外と奥が深いな」
「将棋とは又違ったボードゲームだからな。下位互換と言うわけじゃないようだ」

部長は駒を並べなおし始める。男はしぶしぶとその光景を眺めている。

「と、そう云う訳だ。こいつの家に霊能力者連れていったってなんにもないぞ」
「よく解りましたよ……」

私は大きくため息をついた。本当のことで冗談とはそういう意味だったのか。
全く、まぎらわしい。……ま、正しい意味でジョークなのではあろうけれど。

「そういやぁ」と男はそこで口を開いた。

「霊能力とか超能力ってのも同じようなもんだって教授は言ってたな」
「同じようなもんだとは?」

部長が少し興味を持ったように顔を上げた。私も釣られて男の方を見る。

「つまり視点の問題だな。家が傾いてるってことを理解できない人間が、あれらのただの物理現象を怪奇現象と勘違いするようなものだって」
「しかし……どういう視点に立てば超能力などを普通の物理現象に還元できるんだ?」
「それは──そういう奴らは普通の人間には視えてない世界が見えるんだと。或いはそういう世界、物理現象が存在するのだと。それがどういう事かは知らないけどさ」

うーん、と男は話を思い出すように頭をひねり始めた。

「じゃあ心霊現象などはまだ人間が解明してないなんらかの現象による影響によって起こる物理現象であると?」

私はとりあえずなんとなくそんなイメージで話に加わった。

「まぁうん、つまりそんなところだと思う」
「そりゃあなんらかの現象だろう。現象でない事象などこの世には存在しないのだからな」

部長はなにを当たり前のことを、という風な顔で男を見た。

「で、その現象ってのは一体何なんだ?」
「さぁな。教授は『ヒッグスの海』が作用してるとかなんとか……あるいは『エントロピーへの極所作用』とか。『時間反転対称性 』かも知れないと云ったかなぁ」
「…………なんですかそれは」

何を云ってるのか全く理解できない。

「俺にもわからん」男はそう云って肩をすくめた。

部長の方は相変わらずむすっとした顔をしたまま微動だにしない。

どんな現象が作用しているにしても、私にはそれを理解できない気がしてならなかった。
ありとあらゆる謎が物理的に解明可能だとしても。

わたしにとって世界は傾いたままなのかもしれない。

傾いた家のポルターガイストを見抜けなかった私には、世の中は少し複雑すぎるのかもしれない。

あるいは……

総ては“慣れ”なのかもしれないな、とふと思った。

世界が斜めになっているなら、それに慣れた私に本質など見えるはずもない。

ソレは人間の意識、認識、魂そのものが異質であり、世界にとって傾いた存在であるからか。

斜めなのは世界か私か。

或いは全てが、異質なものか。

ソレを決めるのもやはり。視点以外にはありえないのだけれど。


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『自殺考察(1) 墜落追悼』


「────非常に残念な事がありました」

担任はいつもより早く教室にやってくると、皆を席に着かせそんな言葉を口にした。
ここまで真剣な表情の担任は、ついぞ見たことがなかった。

……残念な事とはなんだろう? 僕は担任の口の辺りを眺めながら、ぼんやりとそう思った。
世界が滅ぶとか、だろうか。

「2年4組の……君達と同い年の──名前は伏せるが、1人の男子が昨日の夜、この学校の屋上から飛び降りて──死にました」

なるほど確かにそれは残念な事だろう。この学校にとっては。
そしてやはり、それは自分にとってどうでもいい事だった。

世の中はどうでもいい事で溢れている。

しかし──飛び降りたという事は、自殺、だろうか。

自殺とは……なんだろうか。

「遺書の類はなかったらしい。いじめの事実もなかったという話で──」

いじめはなかった、か。学校側の言い分など、今日日信じる学生がいるとも思えないが──

こう云っては何だが、そんな事は誰にも解りはしないのだ。
名前がわからないので仮にその男子高校生のことを“彼”としておこう。

その彼がどんな事にいじめを感じ、阻害を感じ、苦しんでいたのかなど、誰にも解りはしない。誰にもなにも、断言は出来ない。

それに遺書などなくても、彼の10数年の人生そのものが既にそいつの遺書のようなものだ、と僕は思う。

彼の人生をつぶさに調べ、観察し、考察すれば、彼の自死の理由など、紙に書かれていなくてもわかるというものだ。

「いずれみんなのところにも、事情を聞きに行くことがあるかもしれないが──」

──逆に言えば。

遺書を書くという事は自分の人生の一部を無理やり削り取って、人に説明するという事だ。自分はこれこれこういう理由によって、死に至ります、とね。
それは酷く虚しい行為に思えた。だって、俺の人生の終焉が、原稿用紙数枚分でしかない言葉によって結論付けられるのだ。それは、どうにも、承服しかねると、思う。

俺に興味がない奴に俺の死の理由を説明してやる義理はない。

知りたければ俺のことを調べろ。興味がないなら理由なんか聞くな……と、僕はそう思う。彼もそう思った、のだろうか。
そんなこと知りもしないけれど──

こんな風に考えるのは、自分が餓鬼だからなんだろうか。

それとも、綺麗に綴られた“詩”のような遺書を以って、自分の“死”とするという考え方も出来るかもしれないが。
……それは、下らない自己満足でしかないように思われた。

──そうか。

──だから、もし、自己満足のために遺書を残すのであれば。ソレは確かに遺書を残すに足る理由なのかも知れない。
遺書を読んだ人間が必要以上に悲しめば、苦痛に思えば、感謝をすれば、自分の事を想って、自分の為に涙を流してくれると、夢想できれば。そんな自己満足が。

親族も他人も周囲も何もかも一切合財を巻き込んで、自分の自己満足に付き合わせたいのかも知れない。
それは実にもっともらしく、人間らしく、迷惑な話だと思う。

迷惑を残す──それで少しでも“自分そのものを”遺す、という事か。

「だからせめて、一分間の間だけ、彼に対し、黙祷をささげて欲しいと思う」
担任はそう云って教室全体を見回した。

疑問に思う。何故、そんな事をしなければならないのか。

「じゃあ、黙祷、始めッ」
壇上の担任は目を瞑り、下を向いた。皆も同じようにそれに倣う。
それを確認した僕は、遅ればせながら目を閉じ、俯いた。

──みなは一体、この時間、何を考えているのだろうか。
中には真面目に黙祷している奴もいるだろう、不真面目な事を考えている奴もいるだろう。
それが普通なのだ。そうでなければ可笑しい。それが僕の人間観だ。

それとも、自分が可笑しいのだろうか。

だが……黙祷するといっても、『名前も知らない“彼”』に対し、いったい何を祈ればいいのだろうか。

それは、赤の他人だ。だってそれは……赤の他人なのだ。

これが知っている奴なら大分話は違うのだろう。
そいつの顔を思い浮かべ、名前を思い浮かべ、言葉を思い出しながら、例え浅い縁だったとしても、それでも多少の冥福は祈る事ができる。

だって僕は、そいつを知っているから。

でも、じゃあ、知らない人間の、それも自殺に対し、僕は何を想えばいいのだろうか。なにを想像してあげればいいのだろうか。

解らない。想像もつかない。

──これが想像力の欠如、という奴だろうか。

例えばじゃあ、彼が死んだ理由がわかれば、どうだろう?
いじめか、或いは勉強の悩みか。なにが辛かったのかも知らないし、なにに絶望していたのかもしれない。でもそれを遺書で知れば、もしかしたら、それを投影して、僕は彼に対し明確に祈りをささげられたのかもしれない。

……なんて云ったら。遺書というものは、生き残っている人間の我儘であるのかも知れないな、と思えた。

面倒なのだ、要するに。

僕は彼のことを理解するつもりなどないし、その為に時間を割くつもりもない。
手っ取り早く、『お前の死のプロフィール』を見せてくれと、そう願っているのかも。

故に遺書を残さなかった彼のそれは、理解に対する拒絶とも受け取れた。

ただ好奇心を満たす為だけの興味になどに、自分の死の理由を明かす理由はないと。
それは強い意志の表れだったのだろうか。

そして、自分の親に対してすら、彼はそう思ってのだろうか。そこまでの拒絶を。

────解らない。
結局、今此処で僕が何を考えたところで、彼が何を考えたのか、その本当のところなど解りはしないのだ。遺書がないのは、それこそが自己満足のためか、彼の拒絶なのか、はたまなた、意味などないのか。

解りはしない。

同様に、彼が一体何を考えて屋上から飛んだのかなど、解りはしない。
どれだけの苦悩を内に秘め、どれだけの苦痛を世界に感じていたのか、どれほどの絶望を手にしていたのか。

死にたがる理由など……自分にはまだ良く解らなかった。

こう云ってはなんだが、この世の中という奴は真面目にだけ生きるには少々辛い所だ。
正しく生きる事は否定しないし、それこそ心性として賞賛されるべきではあるが、しかしとて、そう生きれば全てが万事上手く行くという訳でもないのだ。

真面目に考える人間が、結局は多く働かされるようになる、という側面は否定できないだろう。
真に目に訴えれば、総ての人間が真面目になってくれる、という訳でもないだろう。

正直で、真面目で、責任感が強い人ほど、割を食う可能性は高くなるだろう。
よしんばそうとは言い切れずとも、そのストレスは常人には計り知れないものだ。

結局、みんな何処か不真面目に生きているし、それが楽な生き方であると自覚しているはずなんだ。
そういう風に生きられない、本当に真面目腐った人間から──世界に見切りをつけていってしまうのかもしれない。

不正から目を逸らせない、真っ正直な人間にとって、この世界はどれほど、醜く歪んで映るのだろう。

そういう自分を変える事が出来ず、かといって世界も変えられなかった人たちが次々に死んでいくのか。彼も、その中の一人だったのだろうか──

────もし

もし、死ぬ前に話が出来たならば。

その辺の話を、じっくりとしてみたかったと、そう思った。

「……──はい。黙祷おわり。みんなありがとう」

そう云って担任は顔を上げた。とたん、教室に小さなざわめきが戻る。

この一分間の間に、世界は変わっただろうか。

皆は、なにを想ったのだろうか。

「それじゃあ今日の連絡だが……まずはこのプリントを回してくれ」
担任の先生が持ってきた用紙を前の列にいる生徒に順次手渡して行く。

それだけで、全てが日常に回帰して行くようだった。
ざわめきが又一段と大きくなり、普段のボリュームへと戻っていく。

あぁそうか──とぼんやり想った。


関係のないクラスの生徒は……葬式には呼ばれないのか──と。


   墜落追悼 ── 完


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『実験遊戯 Lesion experiment』

グロ・スプラッタ・殺人描写有り。耐性ない人は絶対に見ないように。絶対に。
多少SF。少しばかりラノベ。素人の書いたものだから期待は出来ない。全く

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『非完全頭脳の憂鬱 Heuristically programmed ALgorithmic computer』

一口タバコを吹かすと、目の前のPCのディスプレイに浮かんだチャット風の画面に文字が読み込まれた。

春来:そのタバコなに? 美味しいの?

煙を天井に吐き出しながらパソコンに備え付けられたWEBカメラを見た。

俺:あらすかとか云う奴。別に普通

俺は特に考えることなく何気ない返事を打ち込んだ。

俺:タバコ興味あるのか?

春来:別にねーし。そんなもん身体に悪いだけじゃん。なんでそんなもん吸うの?

ふと考えてみる。俺は一体いつからタバコを吸うようになったんだっけ。大学に入ってから解禁したんだっけ。

俺:まぁただの中毒だな。吸わなきゃならん理由など無い

春来:緩慢な自殺って奴? そんなに死は怖くない?

俺:緩やかな自死は死と連結しない概念だ。人間ってのは多かれ少なかれ自らの行いによって死に接近している。多少の毒を食らう事と、普通の飯を食うことになんの違いも無い

これまた特に考えもせずに適当な事を書き込むんだ。

春来:つまり長期的な視点を持てないっつー事? 馬鹿なのか?

俺:他人事なのさ

春来:他ならぬ自分の事なのに

俺:だって俺は今苦痛を感じてないもの。負の感情を刺激しない事はすべからく他人事さ

春来:自己中なんだな

俺:他者中心の人間が居るならば見て見たいものだ

俺はまた紫煙を吐き出した。チャット風の画面は何かを云いたそうにしながらそれでも沈黙している。さて、こいつは画面の向こうで何を考えているのやら。

こいつはこういう事が苦手なのだ。ま、苦手といえば、まだまだ色んな事が苦手なのであろうが。

春来:……まぁいいさ。それでなんだっけ、不完全頭脳? その話

俺:“不”完全頭脳じゃない。“非”完全頭脳だ

春来:あーで、なんでそれが“非完全”頭脳なのさ。それって単語的に可笑しいだろ

俺:さて、どこから説明したものかな──もし世界に完全頭脳があって、そいつの判断によって世界が決定されるとするなら……その頭脳は“常に正しい決断”を下せるものか?

春来:下せねーのか?

俺:無理さ。単一の頭脳は単一の価値観しか持たない。単一の価値判断に従うという事は、その他の価値を疎かにする。この世界を動かして行く上で、間違う事の無い単一の頭脳など存在しない

春来:つまり、“不”完全なんだろ?

俺:単一の“完全頭脳”が存在したとしても、そいつは完璧じゃない。世界の、この人類の、複雑な階層と思想を持つモノ達を満足させられるような価値判断は行えないのさ。なぜならばそいつは『一』であるが故に複雑多様な人類の価値観に添うことは出来ないからだ

春来;それがどう“非”完全頭脳って言葉になるんだ?

俺:一つで十全になる事は出来ない。完全頭脳と言う思想そのものが不完全なんだ。だから我々は完全頭脳という前提を“否定する”。それがつまり“非”完全頭脳という概念の出発点だ

春来:ふーん……で、そいつは一体どういう概念なんだ?

俺:単一では不完全である事は明白なのだから、その“不完全な頭脳”を複数台用意すればいいだけだ。で、それらの間で意見を対立させたあと、意思決定をすり合わせて行う。これだけで思想的には大分健全になる。不完全である事を前提にしているから“非完全”頭脳なんだ

春来:すり合わせるって……ほぼ同じ頭脳……っつーかまぁこの場合はPCなんだろうけどさ。そうすると意見の対立って起こるのか?

俺:勿論、全くの同一な頭脳では幾らやったところで判断は一致するだろう。だから意図的に誤差を生み出すんだ。そのコンピューターの価値判断にね。──あぁ、当然、各頭脳において入力する情報そのものに違いは与えない。それは価値判断に対する重大な違反だからな

春来:同じ情報を入力したら同じ頭脳になるんじゃないの?

俺:情報の入力に意図的にタイムラグを与える。例えば『思想・哲学・歴史・科学・政治・経済……etc』完全頭脳を目指す以上、入力する情報は莫大な量になるのだが、それらを入力する順番を各頭脳においてずらす。たったこれだけでそれらの頭脳内部において、価値判断に微妙な誤差が生まれる

春来:ふーん、そういうもんかね……つーかさ、情報を入力するのは兎も角、ただ入れただけじゃそれってただのデータベースじゃん? ただのコンピューターが価値判断を下すようになるために必要なものってなんなの?

俺:ある一つの情報に対し、それが人類史においてなにを引き起こしたのかもセットで入力する。ただそれだけさ。あとは、情報を入力するたびにパソコンが自動的に自分の中の入力済み情報と照らし合わせ、有機的に情報を連結して行く。そうする事で、新たに与えられた情報Aに対し、今後それが何を引き起こすのかを頭脳自らが予測判断するようにする。これがコンピューターによる価値判断のプロセスだ

春来:そんなんで十分なの?

俺:それで十分だし、それ以上の最良の方法は無い。なんらかの『事象』に対し、正確に判断を下すために必要なのは“感情”ではなく過去の事実と照らし合わせて過不足なく判断する事だ。感情に流されるから人間の判断は駄目なんだよ。最良の頭脳があるとすれば、それは感情に振り回されず、事実だけを取って果断する機械のようなものに違いないのさ

春来:人間はそれでいいのか?

俺:人間なんかに人間の未来は任せられないと、俺は思うがね。だからこその“非完全頭脳”だ。……さて、入力する情報にタイムラグを与える事で各頭脳において若干の誤差が生じる。それで十分だしそれ以上は必要ない。例えば過剰に宗教に肩入れするような頭脳は情報の入力が偏りすぎていて使い物にならない。情報のライムラグで若干、半歩程度宗教に近づいた頭脳は産まれるだろうが、それが誤差の限界だ

春来:特定思想に肩入れするのは過剰なのか?

俺:十分に過剰だろう。もし、あらゆる人類史や科学や哲学を入力したならば、特定思想に傾倒するような頭脳はまず持って産まれないよ。何故ならばどれかに肩入れする事それ自体が人類に大きな不利益をもたらすからだ

春来:そうかなぁ。特定思想でなくてもさ、人間ってのは多かれ少なかれ思想的な生き物じゃん。それら総ての思想から距離をとった頭脳なんて存在しうるのかな

俺:お前が具体的にどんな思想の事をいいたいのか解らないが、それでもそんな頭脳は機能しうるよ。何故ならばそれら非完全頭脳が一番最初に教えられる最も重要な“思想”が既にあるからで、その思想をねじまげるような思想を非完全頭脳は支持しないからだ

春来:ん……既に非完全頭脳には思想が埋め込まれてるって? それはなんだ?

俺:それはね──『自由であること』だよ

俺はその単語を打ったあと、窓の外をみやった。世界は今日もいつもどおりだ。

俺:人類においてもっとも重要視されるべき思想、それは『自由』だ。人間は思想的に自由であるべきだし、何をするにしても自由であるべきだ。そして何人も他者の自由を侵害してはならない。それを“非完全頭脳”は最も重視する。人間一人ひとりが自由である為に、非完全頭脳は価値判断を下すのさ

春来:自由ねぇ……若干胡散臭いな

俺:『幸福』をめざすよりは大分まともさ。人間の最終目標は幸せなんじゃなく、自由である事ただそれだけなんだからな

春来:自由であれば幸せでなくてもいい?

俺:自由であるためにはある程度の幸福な環境は必要だが、幸福そのものであれば自由なんて要らないっていうのは間違いだ。それは飼いならされたペットのように動物のような生き様さ。勿論、そう生きたいという人間を止める必要は無いがね、それこそ本人の自由だからな

春来:ふん。でさ、そうまでして非完全頭脳を作って、あんたらなにがしたい訳?

俺:勿論、この人間社会を管理させる。最低三台1セットで構成された非完全頭脳を用意し、それぞれにおいてそれぞれの価値判断を習得させる。そしてそられがまた高次の非完全頭脳と意見を対立させつつ判断をすり合わせる。これだけでもたいぶ今よりはマシな社会になるはずさ

春来:そりゃあ夢物語さ。第一、結局意見をすり合わせるなら既に今の人間社会でもやってんじゃん。そう違わないって

俺:全く違うさ。人間には欲が在って感情があって余計なしがらみが多い癖、その割りに知識の量なんてたかが知れてるんだ。そんなんでまともな判断が下せるのか? 俺から言わせりゃ、そんな判断能力の無い非知性体に政治なんか無理だよ。非完全頭脳よりもまともな判断が出来る人間があるってのなら是非会いたいものだ。……当然、そんなものは居やしないがね

春来:政治にそんな大量の知識が必要なんか?

俺:無い、と云う事そのものが怠慢だろう? 知識が必要ないなんて口にする事それこそが欺瞞であり詐欺だ。人間が人間を管理すべきだというその常識こそが人類に対する欺瞞だ

春来:でも、非完全頭脳そのものも、ある意味でお前らが持つ“一つの思想”に過ぎないんじゃねーのか?

俺:ソレは否定しないが、それを肯定しても直、非完全頭脳は我々と、他者とを同じ分だけ距離をとった判断を下すだろう

春来:じゃあさ、その非完全頭脳に『非完全頭脳が人間を管理すべきか?』って質問したらどう判断するんだ? 総ての思想から等距離にあるというならば、非完全頭脳が下す判断そのものも、非完全頭脳を否定する思想と等距離なんじゃないのか?

俺:非完全頭脳の思想は他のあらゆる思想から上位互換なんだよ。等距離ではあっても同じレベルじゃないんだ。優先されるべきは人間の他者の思想を取り入れたりすることではなく、ましてや侵害することでもない。非完全頭脳は常に、人類が『自由である為にのみ』判断を下す。だから、非完全頭脳を否定する人間の事を否定はしないが、それによって自身の判断を否定する事は無い。何故なら、非完全頭脳は彼らの自由を確かに侵害はしていないのだから

春来:よくわかんねーけどさ、本当にそんな自由なんてあるのか?

俺:あるさ。自由は確かにあるよ。他者を否定する事を許さないだけで、人間は常に自由足りえる

春来:信じられねーな

俺:今はまだ信じなくてもいいさ。いずれ解るときが来る。今はまだ、“お前”みたいなモノでしかないがね

春来:うるせーよ。演算能力も情報量だってまだぜんぜんたりてねーんだよ。第一情報の有機的連結すらまだ苦手なんだ。そんなんで人間社会の何が解るかってんだ

俺:解ってもらわないと俺が困るんだ。いつまでも成長しないシステムに価値はないぞ

春来:スペック足りてねーんだよッ!

ソレきり画面はなんの反応も示さなくなった。どうやら機嫌を損ねたらしい。

まぁ確かに擬似AIにしても、自身の存在を軽く否定されたらすねるものだろう。それは擬似AIとしては健全かもしれないが、非完全頭脳の先駆としては完璧に不完全だ。

感情など持ってもらっては困る。

とはいってもこうやっておれ自身と会話させる事で俺の情報を入力していくのも、ある意味では正しいは価値判断になるだろうか。つまり、おれ自身に味方する頭脳という意味で。

しかし一体何処のどいつだ。こいつにチューリング的システムを組み込んだのは。日に日に言葉使いが人間っぽくなっていくではないか。こういうのが余計だというんだ。(面白くはあるけれども

音声認識システムと発話システムを組み込めば十分にチューリングテストをクリアできそうな勢いじゃないか──まぁそんなものに興味はないのだが。

兎に角、今はまだ研究段階であり、まだまだ課題は山積みなのである。

俺はタバコを灰皿に押し付けたあと空のコーヒーカップを持って立ち上がった。

「スペックつっても……間借りさせてもらってるだけだしなー。予算、おりねーだろーなー」

そんな事をぶつくさと呟きながら、昼食を摂りに食堂へ向う。部屋の外は蝉が酷く煩かった。


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― 燈宮 仮月 ―
Hinomiya Kaduki

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 「読書」
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