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『とある男の手記』

一つ、目に付いたモノを手に取ってみた。カエルのストラップ。
デフォルメされて可愛くデザインされているといっても、はやりというかなんというか、元が元だけに可愛らしいというよりは精精キモカワという評価しか下せない代物だ。
周りを見渡せばそんな微妙なモノが所狭しと置いてある。
どう生きていればこんなに脈絡もなくモノを集める事ができるのだろうか。例えばこのストラップにしてもそう、ネックレスや趣味の悪い指輪などのアクセ、ガンプラから萌えキャラまで大小数十体のフィギュア、数多くの小さな動物モノから1m近くある巨大なぬいぐるみ、意味不明な調度品、民族工芸から小さな額縁に入った高価そうな絵画、巻数の揃わないマンガや小説、雑誌や古書までそこら辺に山積みにされている。
混沌としながらも渾然一体であり、それでいて整理されたこの部屋の主は、ただいま絶賛外出中だ。
これだけモノを詰め込みながら、ホコリ一つも積もっていないところを見ると、やはり綺麗好きで几帳面な性格なのだなぁとうかがえる。
自分だったらまず間違いなくホコリまみれにしてしまうだろう。フィギュアなどの掃除は、あれでいてかなり面倒なのだ。物が一つ増えれば、その部分の掃除の手間は幾何級数的に増えて行くというのが俺の持論だ。だから、俺の部屋にはモノが殆ど置かれていない。全部ダンボールに詰めている。
……本当は、普段からこまめに掃除していればホコリ自体そんなに積もるものではないのだが、どうにも自分はそういうのが面倒で、あげく綿ボコリが出来るまで部屋を放置してしまうのだ。
とまぁ、そんな事はどうでもいいとして、さて、今回はどうしようかと顎に手を当てて考え込む。
一度、大学のキャンパスで彼にどうしてこんな脈絡もなくモノを手に入れ、あまつさえそれをこうやって一つの部屋に飾っているのか聞いたことがある。
その時の彼の答えはこうだった。曰く、『毎度、お近づきの印に貰ってくる』のだそうだ。
なるほど確かに云いえて妙な話だと思ったのを覚えている。
おれ自身は彼に何かを要求された記憶も、あげた記憶もないのだが、若しかしてともすれば、自分の部屋から何かしらどうでもいいものが一つぐらいは消えているのかもしれない。
そんな事は、もはや今となっては調べようもないし、どうでもいいことだと思う。
“そんな事は”些細な事だろう。
少なくとも、おれ自身はそう思っている(他の人にとってどうかは知らないが)。

俺はその部屋をぐるっと見回した。ざっと見た限り数百は下らない量の代物がこの部屋にはある(つまり、それだけの数の被害者が存在するわけだ。全く持ってご冥福をお祈りする)。

「……さて」
俺は目に付いたどうでもいいモノ(簡単に加工したなにかの鉱石。店で買えば500円程度のものだろう)を手に取り、それを胸のポケットに忍ばせた。
本当はネイティブアメリカン辺りの幻惑的な民族工芸品(たぶんドリームキャッチャーとか云う奴だ)の方が欲しかったのだが、いかんせんモノが大きすぎるし手ぶらで持ち歩くには目立ちすぎる。
モノは一個貰い受けたのだし、もうこの部屋に用はないのでさっさと出て行くことにする。
俺は玄関から堂々と家を出ると、無断で複製させてもらった合鍵で扉を閉めた。
全く我ながら酷い話だと思うが、元々は彼の方が先に悪い事をしているのだからこれでおあいこである。
彼自身、こんな事では目くじらも立てないだろう。物が無くなっている事には気付いているかも知れないが、お互いに後ろ暗い行為だ。
──まぁ、たぶん彼はもう誰が盗んでいるのかも知っているのだろう。それでも何も言われないという事はつまり、そういう事なのだ。
さて、今日は家に帰ったらなにをしよう。大学の提出課題の期限も迫ってきている。少しぐらいは手をつけないと不味いだろう。
流石にネットからまるまる持ってくるのは気が引ける。それはいわゆる盗作だし、なにより大学に行って勉強している意味が無いじゃないか。
……まぁ、それでもギリギリまで手をつけない自分と、盗作でもさっさと提出する学生、どっちがヤル気があるのかといわれれば、はて微妙な気もするのだけれど。
帰り道の途中にあるコンビニに寄ってマンガ雑誌を立ち読みをして、それからデザートを買って家路に着く。それが此処に来たときの俺の習慣。
俺の日常。

家に着いた俺はすぐにパソコンの電源を入れた。
今時分、家に着いたらテレビをつけるという学生もそう居まい。そもそもウチにはテレビ自体が置いてないのだが。
冷凍してあったご飯をレンジに入れてスイッチを押した。解凍が終わるまでダラダラとネットを見て回る。今日もまた殺人事件。財布などは取られていないらしく、行きずりの犯行らしい。
残念な事だと、ぼんやりと思う。

X-ファイルというテレビドラマの中で印象に残っている話がある。
そいつはまぁ、いわゆる異常者なのだが、人の肝臓を喰って何十年と生き続ける化物でもあるのだ。
当然、人の肝臓を食うのだから、食われた人は死ぬわけだが、そいつはその“被害者の身につけていたものをコレクションする”という趣味があるのだ。
なるほど、ただ人を殺すのではなく、その戦利品をコレクションする、という思想は、子供ながらに自分の精神を大きく揺さぶったのを覚えている。
ただ殺されるよりは、それは“意味のある殺人だ”と。子供ながらに、そして今でも、そう思っているのだ。
勿論、自分は別に人を殺す趣味はないし、食人する特技も無い。

だが、現実にそんな事をしている奴がいると知ったときは少し、いや、かなり心ときめいたモノだ。

全くそいつはふてぶてしくもその行為を『お近づきの印』と言うのだから笑ってしまうが、それでも意味もなくモノを持ってくるだけで、何か意味が在ったかのように思えると言うもの面白い話だと思う。
殺すならせめて、そいつが持っていたモノを、生きていた証を、手元に残してあげようと──彼がそう考えているかどうかは知らないが、少なくとも自分にはそれが酷く羨ましかったのだ。
勿論、自分はそんな行為に参加するつもりは無い。興味はあるが、その為に一生を棒に振る可能性など持ちたくは無い。
その結果がこんなちぐはぐな行動なのだから、我ながら人間というモノは面白いものだと思う。
ふと思い出して俺は胸のポケットから加工済みの鉱石を取り出した。
これの元の持ち主は一体誰だったのだろうか。今もまだ生きているのだろうか。それとも死んでいるのだろうか。
もし死んでいたとして、この鉱石に憑いて、なにか物申したい事でもあるのだろうか。
「…………」
ま、そんな事は考えても仕方がないことだ。それを彼に聞くのはご法度であるし。
元より持ち主になど興味もない自分は、“ただ殺された人間が持っていたモノ”であると言うただそれだけでソレを持って来ているに過ぎないのだから。
自分はソレを手近にあったダンボールに無造作に突っ込んだ。
──
その瞬間、なにか違和感を感じた。ダンボールの中身をよく見てみる。
なにか足りないような気がした。なにか無くなっているような──
しかし考えたところでそんなものは分かりようもないのだった。整理しているわけでもなければ記録しているわけでもない。
何か無くなったところで、何か増えたところで、自分には解りようも無いのだ。このダンボールの中身の事など。
気のせいか──或いは、彼がモノを取り戻しに来たのかもしれないなどという楽しい妄想をしてから、自分はパソコンの操作に戻った。

レンジがご飯の解凍が終わった事を告げる音を立てる。
さて、今日は何を食べようか。健康的に納豆でもいくか、そう考えながら席を立つ。

明日になれば、またあの部屋にはなにかモノが一つ多く置かれているに違いない。

いずれその内また何かを貰いにお邪魔しよう。


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― 燈宮 仮月 ―
Hinomiya Kaduki

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 「継続は力なり」

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 「時と場合に因る」
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