女は頬杖をつきながらやる気なさそうに呟いた。
「7月はだいぶ休んでしまいましたね。──何か理由でもあったんですか?」
その問いに答えが返ってくる。
「あるといえばあるが強いて云えばない。本質とはえてしてそういうものだ。──例えばそう、強烈な動機を自分の中に感じた事は? 俺は全くないんだ。どうしようもなく、どうしようもなくなり、どうしようもなくなって、どうにかしなければと感じた事が無いんだ。それはどういうことだと思う?」
「さぁて、消極的という意味ですか? あるいは無気力的」
「気力がないわけじゃないし積極的になれないわけでもない。ただ──自分が不確かなのだ」
「自分が自分でないと?」
「俺は俺だ。だが俺という存在は確固として存在しているようには感じられない。俺が此処に居るのは一体何の為なのであろうか? 自我は確かに此処にある。だが、その自我の脆弱性を常に感じているのも確かなんだ」
「常に不安を感じている?」
「別に。いや、どうかな。だが不安と言うような感じでもない。脆い……いや、危うい──何とも違う。自分という存在の小ささかな。それをたまに感じる」
「なにか強烈な動機があれば、そんな自分も変われるかも知れないと?」
「違うのかい? 俺は強烈で爆発的な、そんな動機を人間が持つことが出来たならば、それはとても素晴らしい事じゃないのかな」
「でしょうね」
「だが、そんなものどうやれば手に入れられるんだ。世界一周でも目標にするか? でかい目標を立てるのか? 力強い動機を持った人を見ていると途端に自分の小ささを感じる。かといって自分にそんな強烈な動機はもう手に入らないんじゃないかと思う。だって俺には動機を生み出すための動機がないから」
「なにか新しい事に挑戦でもしてみたら?」
「俺みたいな奴がいったい今更なにに挑戦するのさ」
「まぁソレを云ったらその通りなんですがねーほら、今はネットとかできるし」
「ネットの使い方は良く解らない。たぶんあんまり使ったことがないから」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんらしい」
「初めて知りましたよ。また一つ賢くなったような気がしますよ」
「よかったな。そして俺はなにも変わらずだ。相談してみた俺が馬鹿みたいじゃないか」
「馬鹿はどっちですか」
「というと?」
「幽霊に生きるための動機なんか必要なんですかって話」
女は独り言を呟いて窓の外を見た。
部屋の中には彼女以外誰も居ない。
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或いは、独り言と愚痴と対話の自己嫌悪にまみれた狂言日記
※今期のアニメはそれほど実験的な雰囲気が無いなぁ。作画はだいぶいいけど。刀語り楽しみ
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