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『パラダイス・パラライズ』

パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス)パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス)
(2008/01/11)
汀 こるもの

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「パラダイス・クローズド。楽園は完璧ゆえに、如何なる変化も許容しない。自分は大好きだナァこの作品」

「私は別にそう好きでもありませんけどね」

「だろうね。俺はコレを大好物であると云い、最近はまった唯一の作家と云い、一生大事に保管すると言い切る事が出来るが、残念ながら一般受けするような作品じゃあるまい。それぐらい読者である自分には十分理解できる」

「一般受けしないものを一番好きだと云いきれますか。ま、世の中そんなもんかも知れませんけどね」

「俺は別にそれでもいいんだ。そもそも自分が好きな作品を他人がどうこう評価しようともそれは一向に構わないのさ。例えコレがどこかしこで酷評されていようとも、それはそれで仕方が無いものだ」

「仕方ないんだ」

「そもそも一般受けするような作品じゃないッツーことはアクが強いって事だ。そのあくの強さに辟易する人間も当然居るだろう。というか、居て当然だな」

「そんなにアクの強い作品なんですか? これ」

「お前、読んだんじゃないのか……まぁいいか。アクは強いだろうね。まほろタンほどではないにしろ」

「まほろタンって誰ですか?」

「あまりにもアクが強いんで一部の読者に熱狂的なファンが居そうだけど一般的な視点を持った批評家からはフルボッコにされてそうな感じ(あくまで主観)の作者。古野まほろ。個人的にはデビュー作が鮮烈だった。何が起こっているかわからないという意味で」

「駄目じゃないですか」

「あれはなんだろうなぁ……まぁいいや、兎に角アクは強めかもしれん、という事だ」

「はぁ、具体的には?」

「まずは、生物学(特に海洋系・観賞魚系。いわゆるアクアリウム系)の知識、薀蓄を非常に披露される。たぶん文章の半分近くはそんなもんだと思ってもらっていい」

「げぇーーー半分ってなんですかそれ……」

「でも大体事実だ。後は小ネタ、ギャグ、が多いところか。主人公が双子の二人組みなんだが、いい感じでボケと突込みが入るんで非常に楽しく読めた。主に俺が」

「それは別にいいと思いますが……」

「あんまり他の作品からの引用系のネタを披露されるもが好きじゃない人も居るだろうがね。特に漫画とかアニメからの引用がある気がするナァ、この人の場合。まぁ作品の内容的には微々たる物だけど」

「アニメから引用するのは結構レベル高いですね……」

「つっても風の谷とかエヴァぐらいかなぁ。風の谷原作漫画のネタが出たときは思わずにやりなんだが」

「原作漫画なんてあったんですか!?あれ!?」

「あるんだよ、一応……話がそれてるな。戻そう。この小説で個人的に好きなのは、探偵が連続殺人を起こした犯人に向かって『何やってんだバーーカ!!』って高らかに宣言するところだ」

「…………は?」

「常識的に考えてみろよ。そもそもなんで推理小説ものって探偵が犯人の前とかで推理を披露しなくちゃならんのさ。はっきり云って馬鹿馬鹿しいよな、あれ。勿論、そこにある種のカタルシスがあることは認めるけどね」

「はぁ……」

「でさ、この小説ではそんなもの無視して犯人追い詰めるの。そして馬鹿にするの。お前がやったことには何の意味もねーんだって事。それが二重の意味で推理小説ってモノを根本的に疑問視するものな訳」

「それはまた……自己矛盾ですねぇ」

「小説とか物語ってモノは、それ自身が多かれ少なかれ自分自身を存在矛盾させているとわしは思っているけれどね……ま、それはいいや。兎に角、わしはそんな探偵さんに一目惚れしてしまったのだよ。あぁ、コイツは何て事を云ってくれたんだろう!たまには探偵がそんな事云ってもいいと常々思っていたんだ!」

「ひねくれてますね」

「じゃかしわ。後そうだなぁ、他にもアクが強いといえば、双子の片割れが死神(タナトス)体質つって兎に角周りの人間がどんどん死んでいくっつー設定があって……まぁそれが失笑を買う原因の一つだと思うんだが」

「それはまぁ……そうかも」

「でもこいつよりよっぽどコナンとか金田一の方が悪質な体質だとわしは思うけどね! あいつら周りの人間何人殺せば気が済むんだよ! いい加減自責の念と掛かられねーのかよ! 鋼の心かよ! ばっかじゃネーーの!?」

「うわーその馬鹿にした目線……」

「ま、事実だろ。俺はそういった意味でもこの小説を評価するわけ。人が死にまくる理由を用意しないで探偵モノなんかシリーズ化すんなって感じシネェ? 警察にくっついてりゃ殺人事件に毎日お目にかかれるとでも本気で思ってるのか? 職業探偵ならなんでも赦されるって本気で信じているのか? 探偵自身もその作者自身もだよ!」

「それは……だってフィクションですもん」

「くっっっっっっだらね。フィクションだからなんだよ馬鹿馬鹿しい。フィクションにも動機だって理由だって必要だろうが。それをただそうしたいというだけの作者側や読者の理由でうやむやにすんな」

「まぁそりゃそうかもしれませんが……」

「兎に角さ、俺はそういったある種馬鹿馬鹿しい決まりごとを一瞬でもぶっ壊してくれたこの小説と作者に敬意を表すわけ。いままでそういう事を誰もやってこなかったなんて事は言わないけどさ、ここまで意識的に解りやすくやってのける事に俺は賞賛を送るわけ。そんな話」

「なるほどねぇ」

「そんで、ま、この小説を酷評するのも結構なんだけどさ。酷評し馬鹿にし失笑するだけの権利を有しているのかと、わしはまた思う訳なんよ」

「権利、ですか?」

「ありていに言えばそうだ。俺はさ、そもそも批評とか感想とか、そのへんのもんは全部感傷に過ぎねーって思ってるわけ。お前がそれを批評するのはかまわねーけど、それってただ“お前がそう思った感傷”に過ぎねーよなって話。お前の意見が一般的なんじゃない。お前の批判が的を得ている訳じゃない。それらは総てお前の好き勝手な想像に過ぎないんだよ」

「想像ですか」

「想像だろ。お前らが“この設定は失笑モノである”と云う時、さもその感想が世間様一般の感想であるかのように装うのはやめろ。『自分がこの設定や話が嫌いだから私はこれを酷評します。しかし私以外の人に関してはこの限りではありません』ぐらい云ってから酷評しろってもんじゃないのか」

「でもまぁ、彼らも趣味で或いは仕事でやってるだけでしょうから」

「批評家なんて仕事を俺はあまり認めちゃいない理由がそこにはあるんだけどな。つまり、まるで神がごとき言葉で人の作品を切り捨てていいものかどうかって事さ。そりゃあ、あらゆる作品が万人に受けることがありもしないって事があったにしても」

「万人には受けない、ですか」

「総ての人間に受け入れられる芸術なんてものは存在しない。そんな絶対芸術は理想と空想の中だけの産物だ。読み手を選ぶ作品を作ってはならないみたいな話もあるけどさ。実際考えても見れば、読者(購読層)を意識しないで描かれる物語なんてあるものかね。あらゆる作品はニッチの為に書かれたものであり、その限りにおいてその他の人間には受け入れられない」

「そんなもんですか」

「そんなもんだ。設定が中二くさい? ラノベチック? だからどうした。これはそういうもので、そういう人のために書かれた物だってなんで理解できない? あらゆる作品が“自分の為に書かれている”なんて本気で批評家共は思っているのか?」

「それは……どうでしょうか」

「思っているが如きその批判精神が俺はむかつくのさ。あぁ、これは俺には合わなかった、ただ“それだけなんだ”ってなんで云えないんだ? 何故自分が思ったことをそのまま口にする? 仕事だろうがなんだろうが俺はそんなもんには価値を見出さないね」

「でも、あらゆる作品には、その業界にはそういった意味での批判が必要なんじゃないですか? そういった馬鹿にする言葉があるからこそ、まだまだその作者達は頑張っていいもの作ったやろうって思うんじゃないですか?」

「確かに、そういう側面もあるのだろうな。残念ながら。でもだから余計に俺は好きじゃないんだ、批評家ってもんが」

「それって僻みみたいですけど」

「俺は別に批評したいとか批評家になりたいなんて露ほどにもおもわねぇけどな。俺はただ面白い作品が読みたいだけだ。これからも、ずっと先も」

「ま、でしょうね」


「という訳でわしは『汀 こるもの』にはこれからも非常に期待しているのであった。まる」


「なんという尻切れトンボ。もっと考えてから文章書きなさい」


「うるせーよ」

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― 燈宮 仮月 ―
Hinomiya Kaduki

趣味/
 「読書」
 「音楽鑑賞」
 「妄想」

座右/
 「初心忘れるべからず」
 「思い立ったが吉日」
 「継続は力なり」

口癖/
 「結局は程度問題」
 「時と場合に因る」
 「何事も経験」

欠点/
 「すべて狂言、、、、、

 
『他ならぬ、他人の為に』
『それはつまり、因果のように』
『世はなべて殊もなく』
コミックス・コード
『爆発的情報進化 Meme Explosion』
『Fight and Flight』
『重力の中』
『ロストリモート』
『あんちのみ?』
『日常机上』
『頭蓋骨と頭痛の間で益体も無い話』
『都市なる伝説 Netlore』
『感情と、機械の生物 nothing but ism』
『“特別”もいずれ』
『Letter』
『細胞奴隷』
『死ヲ希シ慮ル事念ズ』
『All are the gradations』
『オール オア ナッシング』
『いつかの心を 忘れる心 for me any more』
『一般的に一般人は一般的に云って一般以下である』
『引き篭もりの愚者』
『人災について』
『世界の片隅で愚痴を云ったら自分に返ってくるって意外と真理』
『危機感欠如認知バイアス Somebody else's problem acknowledgment bias』
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