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「あー自分は一体何をやっているんだろうナァ」
「どうしたんですか突然。どちらかといえば貴方らしくも無い。なんか変な薬でも服用しましたか? ピンク色の象が見えるモノとか」
「実際に薬物を服用したり酩酊状態になる事でピンク色の象が見えるようになるわけじゃないぞ。あれは実際にその手の薬を使用したときに“よく視る幻覚”なのではなく、ただの比喩表現だ」
「え、あれって実際に幻覚でよく視るタイプのモノじゃないんですか!?」
「小説かどっかで使われた表現だったかなんだと思う。そこから酩酊状態にある人間を指して『こいつピンク色の象を見てやがる』って感じで使われたただのスラングだ。中にはお前のように実際幻覚中によく見る映像だと誤解している奴も居るがな」
「……いや、そんな勘違いしている人間はそう居ないと思いますが……たぶん」
「しかしまーこうしてブログを立ち上げて一ヶ月以上が経過したわけだが、なんというか虚しいものだナァという話なんだが」
「話の腰をボキ折りましたね」
「寧ろお前がへし折ったんだがな」
「すいません空気読めなくて」
「ああ、空気読めない人間は死ねばいいのに。……でもそうすると全人類が死ぬ事になるのかな。それはそれで愉快だが」
「───何故にそうなるのですか?」
「“空気を読む事”が『状況を的確に判断して生きろ』という意味であるならば、そもそも人間が生存する事自体が的確かどうか疑わしいぜ。それでなくてもお前が生きている事はこの世界にとって的確なのかな? お前実は要らないんじゃね? 己が生を状況に完璧に的確に合わせて生きる事など又不可能だ。神様が居たら間違いなく云ってるに違いない。お前ら空気読めと」
「いやまーこの場合はあれでしょう。……状況って云うのは大局的な話ではなく、極小的な周囲における雰囲気の事です。大きな眼で見れば色々な事が不的確なのかもしれませんが、その場だけでも状況を読んで的確な行動をする事はできるでしょう?」
「極小的な場合でしか当てはまらないね。なるほど確かにそれはそうだろう。そういう意味の言葉でそういう概念なんだろう。あぁでも俺はこう考えざるを得ない。“大局的に見たって”空気を読む事が大事なのは言うまでも無いだろう?」
「まぁ、それはそうなんですけどね……」
「この世界における空気を読んで今すぐ人類は消滅しようとか思わないかナァ。あぁ、妬ましい妬ましい。空気を読める人間が妬ましい」
「そういう事ですかい──」
「ま、一ヶ月も色々更新してきて解った事など何も無いということさ。つまりほとんど無駄だったという話。これで落ち込まないほうがどうかしているだろう。全く、無駄にも程がある。そんな無駄を楽しむ事が本当に無駄だ。無駄だった!」
「しかし、……無駄なものから有益なものが生まれる事だって、あるでしょう?」
「一年でも二年でも使えばな。だが残念ながら一ヶ月程度の無駄はただのゴミだろう。なんという事だろう。……自分は自分がしている事を無駄であると断ずる事しかできない。なんかの役に立ったとはまるで云えない。何かしらの意味があったと考える事ができるはずなのに、それすらも否定する事しかできない」
「ネガティブに考えすぎですよ。もっと軽くいきましょうよ、軽く。負担に感じているならもっと簡単なところからやっていけばいいんです。それでいいんですよ!」
「────ありがとう。深く考えなくて良いって云われると、少しだけ心は軽くなるよ。ああ、解っている。深く考えてしまうから心はこんなにも重くなり、精神を病んでしまうんだ。全てはそう大変な事じゃないし、考える必要も無い……それなのに」
「考えてしまう、ですか?」
「そうだ。成熟した人間はある一点から目を逸らす事ができない。その一点はある意味で生きる目的と言い換えてもいいし、自分自身の価値観と云ってもいい。それがいつ頃形成されていつ頃完成するのかは知らないが、それを見てしまったが最後、“どうしても眼を逸らせなくなる”んだ。……それを見つめる事を休む事はできない。心が縛られたように釘付けになるんだ。それを見つめる事以外に『意味のある事』がないんだ」
「それは……あるでしょう。他にも。他の生き方が──」
「あぁ、解っている。それ以外の生き方もあるんだろう。でも今はその一点しか眼に入らないんだ。……じゃあ教えてくれ、その他の生き方を。これ以外に意味のある人生を。価値観を。ただ一点にあるその神を!」
「どうすれば、その眼を逸らしてあげられるんですか?」
「簡単なことだ。俺に教えてくれ」
「だから、何を」
「真実の愛を」
「それは無理です」
「そんな事は端から知ってるよ。何故ならば、そんなものは最初から存在しないからだ」
「ならば、誰も貴方を救えない」
「だから、誰にも俺は救えない」
「救われませんね」
「報われないだけさ」

